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老舗の高級旅館のような、至れり尽くせりのサービスを受けることもできれば、完全にパートナーと二人の世界に入り込むプライバシー重視の過ごし方もできるという、 類まれな温泉宿が｢野の花亭こむらさき｣なのだ。全国にある有名高級旅館にもない、この宿独自の個性が、この絶妙なバランスなのだ。

創業は平成5年。その頃は全国的にみても全室が露天風呂付きの宿は、ほとんどなかったはずだ。 ｢野の花亭こむらさき｣はオーナーと女将による、こだわりが凝縮している。オーナー夫妻自身が、泊まりたい宿を作る・・・・・これがこの宿の最初のコンセプトだった。 この宿の成功は、旅館関係者に多大な影響を与えたのは間違いない。

大浴場を持たない客室露天風呂の宿というコンセプトも個性的だが、たった5室という小規模の宿という事も見逃せない。大声をあげる団体旅行客は、ここにはいない。 伊豆下田駅の近くとは思えないほどの静寂さと、大事な人と過ごしながら、特別扱いをされているような感じを覚えてしまうほど、この空間に身を委ねることは心地いい。

伊豆半島は、日本列島屈指の温泉密集地帯。そんな中でも｢源泉100％｣にこだわれば、実はそんなに多くないのも事実だ。 大規模なお風呂と露天風呂を有する大型旅館は、塩素消毒を施した、いわゆる循環風呂がほとんどだ。しかし｢野の花亭こむらさき｣は、常に新鮮な天然温泉が、 客室の露天風呂に注がれている。なんとも贅沢な話でもある。

｢野の花亭こむらさき｣は、東京や京都の一流料亭のような会席料理が出されるわけではない。 しかしながら、伊豆ならではの厳選した素材を使った料理は、多くのリピーター客を引き付ける。 広々としたお部屋の中で、パートナーとの楽しい会話と同時にいただく夕食は、必ず思い出に残るはず。朝食は、洋食もセレクトできるのも嬉しい。

新婚旅行、結婚何周年の旅行、お誕生日のお祝い旅行・・・など、それぞれの人生の節目で利用されることが多いのも｢野の花亭こむらさき｣の特徴のひとつ。 そして、部屋に置かれていた雑記帳をのぞくと、今は亡きご主人との思い出が風化しないように、年に一度、お墓参りのようにお子さんと訪れるご婦人もいらっしゃるようだ。 彼女にとっては、生前のご主人と泊まったこの宿の思い出が、何よりも愛しいに違いない。

この宿は、各界の第一線でご活躍している方がたくさん訪れるという。いつものように女将に頼めば、いつものように心地よく受け入れてくれる、 そんな当たり前を常時用意してくれているから、またこの宿の門をたたく。いったん客室に入ってしまえば、他の客に会うこともない。完全にプライバシーが守られているからこそ、 ｢野の花亭こむらさき｣は支持されるのだ。

ここでは朝食をいただいてから、急いで身支度を整えることは必要ない。時間をゆったりと使い、パートナーと過ごす時間を愛しくかみしめる事ができるはずだ。 この宿に泊まると、今まで利用していた他の宿のせわしさが、余計に感じられてしまう。旅行の楽しさとは、時間というものをいかに充実して過ごせたかにかかっている。 そんな事まで再認識させてくれるのが｢野の花亭こむらさき｣なのだ。